「ミリオンダラー・ベイビー」

2005年のオスカー作品賞に輝いた「ミリオンダラー・ベイビー」(イーストウッド監督)は、女性ボクサーと年老いたトレーナーの心のきずなを描いた人間ドラマ。監督賞、主演女優賞、助演男優賞も合わせて受賞した。作品の完成度は高く、興行的にも成功した。

イーストウッド監督はワーナーに出資を断られた後、他の大手配給会社にも頼み込んだが、すべて却下された。結局、映画関係のベンチャー企業であるレイクショア・エンターテインメント・グループが半額を出資した。残りをワーナーが持つことで製作にこぎつけた。

「ファインディング・ネバーランド」

作品賞にノミネートされた5作品のうち製作費をメジャースタジオが丸抱えしたのは、ジョニー・デップ主演の「ファインディング・ネバーランド」だけだった。製作費は2100万ドルだった。ミラマックスが配給した。

「アビエイター」

作品賞にノミネートされた5作品の中では、「アビエイター」(マーティン・スコセッシ監督)も、投資家からお金を集めた。ベンチャー企業経営者のグラハム・キング氏が出資した。出資額は1億1600万ドルの製作費の70%に当たる8000万ドル。

ミラマックス・フィルムズが配給した。アカデミー賞では、助演女優賞など5部門を受賞した。

「レイ」

「レイ」(ユニバーサル・ピクチャーズ配給)も、複数の大手配給会社から出資を断られた。結局、製作費4000万ドル全額はエンターテインメント事業を手掛ける投資家のフィル・アンシュッツ氏が拠出した。

「サイドウェイ」

「サイドウェイ」は、インディーズ映画系のフォックス・サーチライト・ピクチャーズが製作費を出し、配給もした。これも大手への売り込みが失敗した結果だ。「サイドウェイ」の製作費はたった1600万ドルだった。



株価下落や株主から圧力を回避

製作費を外部に仰げば、利益が上がったときの分け前もその分減る。それでも、リスク回避を優先するようになった。失敗したときの株価下落や株主からの攻撃をかわしたいからだ。

映画会社の経営はかつては「どんぶり勘定」にもたとえられた。しかし、米産業界全体が株主利益を尊重するコーポレートガバナンスの強化を求められる中で、映画業界も、経営の透明化と収益の安定を重視し始めた。